P旗プロジェクト


http://mytown.asahi.com/fukushima/news.php?k_id=0700000110706000507/06

●本船出港準備中 総員帰船セヨ/水産海洋高校 いわき海星


 本船出港準備中、総員帰船セヨ――。いわき市小名浜いわき海星高校の屋上に、こんな意味をもつ船舶信号旗「P旗」が揚がっている。県内唯一の水産海洋高校だが、東日本大震災による津波で校舎が損壊、全校生徒が近くの別の高校で授業を受ける。校舎の清掃を始めた生徒たちの「みんなで母校へ帰る準備をしよう」という思いが旗に込められている。


 同校は津波で校舎1階が破壊され、平屋の実習棟が全壊した。男子生徒1人が亡くなり、避難先から通学する生徒もいる。


 信号旗は船の必要装備品で同校にとっては教材だ。アルファベットや数字など40種類あり、組み合わせて使うが、1枚でもそれぞれ意味がある。青色の真ん中に白い長方形が染め抜かれたP旗は、校長室前のがれきの中から見つかった。


 生徒会長の高橋裕基さん(18)は「学校を船に見立てた、僕たちの気持ちの象徴です」と言う。


 校舎は強度検査が終わり、修復して使うことが決まった。それに合わせて6月10日、この旗を屋上の無線塔にはためかせ、生徒会役員と有志が2〜4階の教室の掃除を始めた。ロッカーや机を廊下へ運び出し、ほうきではいてモップがけをした。旗は平日、毎朝揚げ、夕方降ろしている。


 同月24日も放課後、男女20人が自転車や徒歩で集まった。2年生の小林風子さん(17)は「3階の教室も砂だらけ」。本来ならモールス信号の授業が始まる時期だが、避難先の高校に機材はない。「座学だけじゃつらい。早く元に戻りたい」と話した。


 掃除がない日は、ロープワークの技術を応用し、組みひも細工で「救命浮環」(浮輪)のストラップを作る。震災後、ノートや鉛筆などの支援物資を送ってくれた全国の高校に、感謝の印として礼状を添えて10個ずつ贈るつもりだ。300個の製作が目標で、現在200個以上に達している。


 部活動も再開するため、流失した備品の提供もホームページで呼びかける。


 母校へ戻るためのこうした活動には「P旗プロジェクト」と名が付いた。地元住民も「漁師街にふさわしい」と賛同。「小名浜まちづくり市民会議」は、P旗を地域復興の「旗印」に決めた。(西堀岳路)

P旗プロジェクト「学校再開準備中につき、全員帰校せよ!」