汚染木材:バイオ燃料作る技術


http://mainichi.jp/select/science/news/20120201k0000m040114000c.html02/01

汚染木材:バイオ燃料作る技術 東京農業大客員教授ら開発


東京電力福島第1原発事故で放出された放射性物質に汚染された木材などから、放射性物質を除去しつつバイオエタノールを高効率で作る技術を東京農業大の市川勝客員教授らが開発した。福島県では除染作業で生じた廃材や下水汚泥が処理されずたまり続けている。市川さんは「負の遺産をプラスにする一石二鳥の技術。活用してもらうことで復興の一助になれば」と話している。【神保圭作】


 市川さんは09年、木材や稲わらを従来よりも効率良くバイオエタノールに加工する技術「直接合成法」を他大学と共同開発した。乾燥させた原料を粉砕し、800〜1000度の高温水蒸気で一酸化炭素と水素にガス化。金属触媒を使って反応させると濃度97%のエタノールになる。


 この方法で、原料1トン当たり約500キロのバイオエタノールが生成でき、一般的な製造法の4倍にのぼることから、低コスト化につながると期待されている。


 市川さんは、原発事故由来の放射性セシウムが約800度で揮発する特性に着目。原料をガス化させる過程でセシウムをフィルターに吸着させることで、汚染木材でも加工できるよう改良、実験で99%除去できることを確かめた。今後は福島県南相馬市で実際に汚染された木材を使い、実証実験を予定している。


 試算では、約10万トンの木材からバイオエタノール約5万キロリットルを生産でき、すべて汚染木材を使っても、10キロ分のフィルターで放射性セシウムを吸着できるという。


 この方法は木材だけでなく下水汚泥や落ち葉なども原料に活用できる。福島県ではいずれも処理が進まず、一方で広大な森林の樹木も汚染されたまま放置されている状態だ。市川さんは「放射性物質を取り巻く問題を、この技術で解決できる可能性がある」と話している。