どうする?超高層ビルからの避難


http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/1011.html10/11

超高層ビルで大地震に遭遇し、その後、火災が発生したらあなたはどうしますか?東京・日本橋の25階建てのビルで10日、3000人以上の人が非常階段で地上までおりる大規模な避難訓練が行われました。
訓練のポイントは、危険性の高い階から順番に避難する「順次避難」です。
社会部・災害担当の島川英介記者が解説します。

3300人が参加 超高層ビル避難訓練
訓練は東京・日本橋にある外資系IT企業の高さ108メートル、25階建てのビルで、およそ3300人が参加して行われました。
訓練では、大地震のあと4階の食堂で火災が発生し、地震の影響で消火設備が十分機能しなくなり燃え広がるという最悪のケースを想定しました。
時間帯によって数千人が中にいるため、もし、そんな事態が起きたら非常階段にわれさきにと逃げる人が殺到してけが人や場合によって死者が出るおそれがあります。

新しい手法“順次避難”
混乱を避け、安全に避難するため、この企業が導入しているのが「順次避難」です。
順次避難は全館一斉に避難するのではなく、危険性の高い階から順番に時間差をつけて避難させます。
訓練ではまず火災が発生した4階とその周辺の5階と6階の人たちに避難するよう指示しました。
次に指示したのは、比較的火災現場に近い7階周辺と、煙が充満しやすい最上階に近い21階以上の人たちに対してです。
そして最後に残りの中層階に避難するよう指示しました。
避難を指示するタイミングをずらすことで、非常階段に人が殺到したりパニックになったりするのを防ぐのがねらいです。

訓練による改善
この企業の訓練には、5年前から火災や避難の専門家が協力して、改善点を助言しています。
去年は、最上階付近の人がおりる前に中層階の人が非常階段に殺到したため、最上階付近の人が3分ほど動けなくなってしまいました。
実際に火災が起きて煙が充満していたらたいへんな事態になってしまいます。
このため、ことしの訓練では、中層階の避難の指示を火災発生から10分ごと去年より遅くし、その結果、最上階付近の人たちは、スムーズに避難を始めておよそ14分で1階におりることができました。

新たな課題も
ただ、別の場所で混雑するという課題も見つかりました。
ことしの参加者は、去年の1.5倍以上に当たるおよそ3300人。
最後に避難の指示が出た中層階の人が避難する際に混雑する場面が出ました。
それでも全員がおよそ30分でビルの外に出ることができました。
中層階から避難した女性は「避難の指示がなかったらパニックになると思うので訓練でいい心構えができた」と話していました。
訓練後に開かれた反省会では、ふだんおよそ5000人いる在館者全員をスムーズに避難させるためには各階の避難のタイミングや時間配分を検討し、さらに改善していくことになりました。
訓練を行った日本IBM副社長の下野雅承さんは「社員の安全を守るために最悪の事態を想定することが大切だ。今後も訓練を繰り返して安全な避難方法を確立したい」と話しています。

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実際に超高層ビルで火災に遭遇したら・・・
ところで実際に、超高層ビルで火災に遭遇したらどうすればよいのか。
超高層ビルは、延焼を防ぐため耐火構造の壁や床によって区画が仕切られているうえ、スプリンクラーや二重の防火扉などさまざまな防火対策がとられています。
このため初期消火に失敗しても一定の時間火が燃え広がらないようになっています。
訓練では高さ25階から1階まで降りるのにかかった時間は長くて30分ほど。
避難する時間は十分あります。
慌てずに防災センターの指示に従って避難をすることが大切です。