総選挙をやるかどうかは、相当議論した「AKB0048 next stage」河森正治総監督に聞く


総選挙をやるかどうかは、相当議論した「AKB0048 next stage」河森正治総監督に聞く1 - エキレビ!(1/5)02/13

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中盤のクライマックス直前、ここまでの制作秘話や今後の展開について、河森正治総監督に伺ってきました。
(1期放送中に行ったインタビューはこちら。前編後編



総選挙に関する部分を抽出
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――裁判の後は、本家AKB48でも注目を集めるイベント、選抜総選挙が描かれました。
河森 総選挙をやるかどうかは、相当議論しましたね。はたして、(アニメとして)上手く作れるのか。僕らも本物の総選挙を武道館で観ていたので、それに比べて全然劣るものを作ってもしょうがないですから。
――前回のインタビューでも、総選挙の会場はものすごい空間になっていて、「空気が歪んでいる」と仰っていましたが。
河森 あの空気の歪む感じが、臨場感を出しにくいテレビというメディアで表現できるのかは、挑戦でした。自分も、岡田さんも、(監督の)平池(芳正)さんも、一緒に観に行ってて。その後、過去の映像もいろいろと観て。どうやったら一番臨場感が出るかは、ずっと話していました。その中で、総選挙だけを描くというよりも、メンバ―とファンとの交流。投票というのは、ファンの気持ちを受けているんだというところは大事にしようという事になっていったんです。それで、岡田さんの方から(1期でも登場した)握手会をもう一回やりたいと。最初、岡田さんは、16話の半パート(前半)で握手会をやって、残り半パートで総選挙をやれると言ってたんですけど。それはさすがに納まらないだろうということになって。
――総選挙の本戦は、16話の後半から17話のラストまでを使って描かれていますね。
河森 岡田さんが最初に書いたシナリオの「0稿」みたいなものに、最初の何人か、(研究生の)美森と、ともちん(11代目板野友美)くらいまでのスピーチがあって


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そのセリフ回しがすごく良かったんですよ。だから、尺を短くするために人数を絞るよりも、みんながどんどん喋った方が面白いだろうと思ったんです。
――それぞれのスピーチが個性的で、各キャラの今まであまり見えてなかった面が見えてくるような内容もあって、感動的でした。監督は、の2011年と2012年の総選挙を会場で観ているそうですが、その中でも、特に印象的だったことを教えて下さい。
河森 多すぎて、とても選べない(笑)。過去の映像も観ていますから。僕が海外取材へ行くのは、海外に行けば(日本にはない)インパクトの強いものに出会うこともあるからなんですけど。まさか日本で。しかも、武道館の中で、こんなことが起きているなんて思ってもなかったです(笑)。
――先日発売になった『河森正治 ビジョンクリエイターの視点』という本でも、河森監督の作品作りにおいて、いかに取材が重要なものなのかが書かれていました。
河森 ええ。その場所でしか体験できないこと。ドキュメンタリー映像でさえ撮れないものを直接、感じに行きたいんです。
――未体験のものを求めて、アジアの辺境などにも取材へ行ってきたのに、今回は、それが武道館にあったと(笑)。
河森 そうなんですよ。ここまでの秘境がアイドルグループの中にあったとは(笑)。メンバーがインタビューなどで、「あそこの場に立った者しか、この気持ちは分かりません」と言い切る気持ちもよく分かります。普通の意識とか理性じゃない、深層心理を揺さぶるような感じがあるんですよね。
――総選挙の回では、渡辺麻友さん演じる研究生の園智恵理が6位に選ばれて、過呼吸を起こしながらも壇上に上がるシーンがキーになったと思うのですが。
河森 はい、そうですね。
――あそこは、アニメーターの絵と、声優の芝居、その両方のクオリティが揃わないと、成立しなかったシーンじゃないですか。
河森 ええ、腕の良いスタッフに恵まれて、本当に良かったと思っています。
――たしかに錚々たるアニメーターさんが揃っているので、絵に関しては、スケジュールさえあれば、クオリティは計算できたと思うんです。一方で渡辺さんに関しては、あの芝居を絶対にできると確信をした上で、作られたシーンだったのでしょうか?
河森 本当に息だけで、あの長尺を持たせられるかどうか、というのは考えました。僕は(2011年に)初めて武道館に行ったとき、横山由依さんが過呼吸になったところを見てるんですね。


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――有名なシーンですよね。僕もドキュメンタリーで観ました。
河森 ドキュメンタリー映像は、編集されていて短いんですよ。実際は、立ち上がったときから足がフラフラで。ステージへ行くまでに他の人の3倍くらいかかってて。階段で倒れるんじゃないか、誰か止めてあげろよって思うくらい過呼吸を続けてて。そこも一種、異様な空間になってた。あの、壇上まで辿り着かないんじゃないかという感じは表現したかったんです。麻友なら、それを近くで見ているわけだし。そうなる気持ちも分かりそうだから、できるんじゃないかなと。正直、僕としても、ここに勝負かかってると思っていたんですけど。過呼吸のシーンは一発OK。見事なものでした。

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――研究熱心なメンバーばかりなんですね。ちなみに、総選挙の順位に関しては、どのように決めていったのですか?
河森 順位を決めるのは、嫌で嫌でしょうがなかったですね。自分たちも投票して決めようかと言ったりもしたんですけど、そんなことしてたら、シナリオ作業が遅れちゃうし(笑)。あの形に収めるまで、いろんな論議を重ねました。打ち合わせのたびに、順位は変動してましたね。
――1位が8代目大島優子で、2位が5代目高橋みなみという並びや、智恵理と美森の研究生組など、ストーリー的に決まってくるメンバー以外の順位は、すごく悩みそうです。
河森 ええ。単純に順位が上だと良いのかといえば、そうではないし。ともちんみたいに順位が下がることで、感情が盛り上がることもあるので。あと、名前を呼ばれない研究生の子たちが、名前を呼ばれるメンバーを見て、座ったまま話してる会話の説得力がすごくあったんですよね。壇に上がらなくても、あの空間にいることがドラマになってるというのかな。そういう演技をしてもらえたのは、とても良かったと思います。
――実際に、あの場に座ったことがある声優選抜の子だからこそ、できるお芝居だったんでしょうね。
河森 そうでしょうね。名前を呼ばれない子たちにも、絶対にスポットを当てたいという思いはありました。


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形としては順位がつくんですけど、それだけが全てではない。そういう雰囲気は出したかったんです。そして、深層心理の暴風雨なのか嵐なのか。そこに渦巻いている、得体の知れないカオスなエネルギーそのものも表現したかったんですよね。
――ストーリーの本筋からは外れるのですが……。総選挙のとき、作中で各メンバーの選挙ポスターが登場しました。それぞれの個性が良く出ていて、気になったのですが、絵柄のアイデアなどは、誰が?
河森 あれは、キャラクターデザインの江端(里沙)さんに、「こういうキャラだから」と伝えて、一人何点もラフを描いてもらったんですよ。その中からセレクトしていった形ですね。再オーダーをかけたキャラもいますし、僕と江端さんでキャッチボールをしながら、決めた感じです。
――僕の押しメンは、75期研究生の東雲彼方なんですけど。彼方のポスターって、戦闘服を着てるんですよね。「一人だけ、こんな地味な服を着てるから、選抜に入れないんだよ〜〜」とか思いました(笑)。
河森 ははは、そこも狙いですね(笑)。何点か上がって来た中から、あれを選んだんですよ。この子は自分の売り方をちょっと間違ってるんだって(笑)。
――そうだったんですか! アピールのポイントを知ってる、妹の楚方を見習って欲しいです(笑)。
(丸本大輔)