陸前高田の遺児、阪神被災地でミュージカル


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 東日本大震災で両親を亡くした岩手県陸前高田市の児童たちが来年1月、阪神大震災の被災地の兵庫県西宮市でコーラスミュージカルに出演する。練習を通して仲間で支え合うことを学んだ子供たち。2011年3月11日の震災から4日で1000日がたち、津波禍の風化が懸念される中、主催者らは「子供たちの成長への支援の輪を阪神の被災地からも広げていきたい」と熱意を込める。

支え合い新たな絆…4日で1000日
♪小さな命が精いっぱい生きている。雨に打たれ、風に吹かれても負けない強さがある♪


 津波で壊滅した名勝「高田松原」の油絵を飾る公民館に1日、元気な歌声が響いた。仙台市で被災し祖父母に引き取られた熊谷海音(かのん)さん(10)や、仮設住宅で親類と暮らす双子姉妹(9)ら市立小学校の4年生たちだ。姉妹の父親は今も行方が分からない。


 本番前の最後の振り付け練習に、元神戸市立中教諭の村嶋由紀子さん(65)と夫で声楽家の檀美知夫(だん・みちお)さん(66)の演技指導も熱を帯びる。夫妻が兵庫県から陸前高田を訪れたのは震災後14回目。11年11月の慰問コンサートで海音さんに「私も歌いたい」と声をかけられ、指導役になった。姉妹たちも加わりグループができた。


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 昨夏、ある児童が練習を放り出した。演技を巡って会話する中で、何気ない言葉に自尊心が傷ついてしまったのだ。「親や古里を一瞬で失い、新たな環境にまだなじめず、情緒が不安定な時期だった」。阪神大震災後に中学生の心のケアを担当した村嶋さんは振り返る。


 だが今では「そのセリフ、だめじゃん」と素直に言い合える仲間だ。「『チームの仲間』として、つらい時には互いに手を取り合うことの大切さを、大人より先にこの子たちは学んだ」と村嶋さんは目を細める。双子姉妹の祖母(71)も「引きこもりがちな孫が人前で歌う喜びを知って笑顔が戻った」と喜ぶ。


 ミュージカル「奇跡の街」は夫妻が脚本と作詞作曲を手掛けた。大津波から復興した東北のまちを描く未来想像劇だ。来年1月12日の本番のチケットは既に完売。関西では、共演する大人の男女30人が市民歌劇団奇跡の花」を結成、旅費・宿泊費のカンパを続けてきた。海音さんは「応援してくれる皆さんの前で、一生懸命歌う姿を見てほしい」と意気込んでいる