「宮城県鮫浦港 栄漁丸 活ほや蒸し」

http://www.kahoku.co.jp/special/spe1142/20150611_01.html 06/11

<その先へ>蒸しホヤで販路開け/経験の味加え商品化
◎漁業 阿部誠二さん、水産加工業 佐々木清孝さん(石巻市


東日本大震災津波と、福島第1原発事故後の韓国の輸入規制で二重の打撃を受けた宮城県石巻市鮫浦のホヤ養殖漁業者が、近隣の水産加工業者と手を組んで「蒸しホヤ」を商品化した。ホヤ養殖を断念した宮城県女川町の津波被災者の夫婦が仲間になり、味付けに経験の技を加えた。保存の利く地元の伝統食を売り込み、新しい販路開拓に挑戦する。


 ホヤを養殖する阿部誠二さん(31)は養殖施設と自宅を流された。ボランティアの支援を得て父忠雄さん(64)と再起した。昨年、水揚げを再開したが、韓国の販路を失った。希望を託す蒸しホヤ作りの模索は同12月、本紙「その先へ」で報じられた。
 完成した商品は「宮城県鮫浦港 栄漁丸 活ほや蒸し」。栄漁丸は誠二さんがホヤ養殖に使う船の名で、生産する誠二さん親子の写真が商品の袋を飾る。
 蒸しホヤは、傷みやすいホヤを加工した保存食。誠二さんは遠来のボランティアに自家製の蒸しホヤを振る舞った。「『初めての味。うまい』と好評で、商品化を思い立った」と話す。

パートナーは、鮫浦に近い同市大原浜で水産加工場を再開して1年の佐々木清孝さん(57)。「震災前、阿部さん親子のホヤを買っていた縁で、苦境打開を共にする同志になった」
 蒸しホヤの試作が始まったのは、2年目の水揚げが始まった後のことし5月。佐々木さんは蒸し機械を導入し、心強いスタッフも採用した。女川町小屋取の阿部邦晴さん(67)、知子さん(65)夫妻だ。
 2人は長年ホヤ養殖を手掛け、自ら製造許可を得て蒸しホヤも作っていた。だが、津波に被災して養殖を諦め、邦晴さんも失意から病気になった。が、「経験の技を生かして」との依頼に意欲をよみがえらせた。
 「うちの蒸しホヤは塩で味付けしたが、誠二さんのは酒蒸し。それぞれの良さを合わせ、さらにうまい味を吟味した」と邦晴さん夫妻。朝に水揚げした新鮮なホヤを材料に工夫を重ねた。加工場の8人のスタッフが味見をし、「皆がうまいと思う味で決めた」。


 「復旧支援で出会った1000人以上の友がいる。蒸しホヤを店で出したいとの要望も横浜や山梨からあり、新しいつながりを財産に販路を広げたい」と誠二さん。
 「活ほや蒸し」は200グラム入りで600円。仙台や東京の居酒屋、料理店、各地の物産展にも味を伝え、「ホヤを知らない人の口に入れてもらおう」と佐々木さんは張り切る。連絡先は「やまき」090(4043)1998、ファクス0225(24)2459。(寺島英弥)